世界をつくるということ (1)
世界をつくる。
なかなか大仰なタイトルになってしまいました。
前回の記事で、
「空間を装飾して、世界観を作り上げたい」
ということを述べました。
では、作り出したい世界観とは何か。
今日はそのあたりのお話をしたいと思います。
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私は幼少期から今に至るまでずっと、本の虫です。
いままでたくさん読んだ本の中でも、
異世界を旅する小説が特に好きでした。
いつもの日常を送っていたら、ふいに
異世界へ迷い込んでしまう。
いつもの曲がり角を曲がったはずなのに、
気付いたら知らない店ばかりの通りに出ていた。
そんな、
「なんてことない日常に、非日常がふと食い込んでくる」
お話を読みふけっては、
自分の日常にも、そんな異世界への入り口が
ぱっくりと現れないだろうかと、
日々考えていました。
あるいは、絵画の世界。
ジョルジョ・デ・キリコの「街の神秘と憂鬱」や
マグリットの「光の帝国」、
はたまたハンマースホイや
アンドリュー・ワイエスの描く空気感に惹かれては、
「この絵画の世界に入りたい!」と憧れていました。
ですが、小説はいつか読み終わってしまいます。
絵画をぺたぺた触っても、そこから先へ体が進むことはありません。
小説が終わったあとも、私の人生は続いていくのです。
絵画のようには美しくない、灰色の日常を送るのです。
現実世界に生きづらさを感じていた私は、
「ここではないどこか」へと行きたがるのをやめ、
その代わりに
自分が住みたい世界を自分の部屋の中に作ることにしました。
私が住みたい世界。
小説のようにドラマチックで、
絵画みたいに美しい世界。
現実の世界が美しくないのならせめて、
私の自由にできる場所は
私の好きな世界に変えてしまおう。
こう考えた私が、
自分の部屋に手を加え始めたのは高校生のときでした。
自分の頭の中にしかなかった世界を、
現実世界の中に作り上げていく作業が始まりました。
次回に続きます。
